タイ北部のチェンマイ市に近い山岳地帯に暮らす少数民族の生活向上を支援する事業です。
以前は違法なケシ栽培が横行していたこの地域は、タイ政府の強力な麻薬撲滅作戦によってコーヒーなどの代替換金作物への転換が図られてきましたが、思うように進んでおらず、生活は苦しくなる一方でした。
そこでALL Net は、専門家の協力をいただきながら、彼らのコーヒー栽培を支援することにしました。この事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力によっています。
2007年 パイロットプロジェクト
2008年 外務省 チェンマイ近郊の少数民族生活向上プロジェクト(CMPP)1期
Chiangmai Minority People Project
2009年 同2期
2010年 同3期
2011年~ 継続フォロー
ALL Netが活動を開始する以前のことです。当時タイ政府が国内の麻薬撲滅作戦を推進しており、それを日本政府が支援していました。
そのプロジェクトに参加していた市川秀文(ALL Net創設者、当時は民間企業の現役社員)が、政府の作戦に協力していたチェンマイ大学農学部幹部との懇談の中で悩みを打ち明けられたのです。
現役リタイヤ後はボランティアで国際貢献をしたいという思いを抱いていた市川は、その悩みの発言から、【タイ山岳民族生活向上】に貢献できそうな可能性を感じ取りました。
市川は数人の有志とともに自費でチェンマイ大学からコーヒー苗を買い、山岳少数民族でコーヒ栽培に意欲のある農民にそれを寄贈しました。それは自費でできるささやかな支援活動にすぎませんでしたが、確かな手ごたえがあり、本格的な支援活動を開始する萌芽となりました。
そして市川は有志とともに現在のALL Netを立ち上げ、 外務省に働きかけてプロジェクト(CMPP)が本格的に動き出したのです。
タイには約100万人の山岳少数民族がいます。その多くは北部の山岳地帯に暮らしています。目覚ましい経済発展を遂げたタイですが、これら山岳少数民族はその恩恵を享受できないばかりか、逆に伝統的な暮らしからの変化を求められるという苦しい立場に追い込まれていました。
違法なケシ栽培をやめて他の換金作物へ転換し、且つ生活を向上させることが必須の対策ですが、焼畑の拡大、農薬多用等で逆に生活環境が悪化するなどの問題が顕著になり、対策は行き詰りました。
タイの山岳地帯の気候に適したコーヒー栽培を、ケシ栽培に代わる有力な収入源としてタイ政府は積極的に推進していましたが、必ずしも順調に進んでいたわけではありません。
チェンマイ大学幹部の悩みは次のようなものでした。
◆治安面からも山岳少数民族の換金作物転換と生活向上が必須であること
◆土地柄からコーヒー栽培が有力な手段であるが、安定した収入には植樹後5年以上の時間が必要なこと
◆換金性の遅さからコーヒー苗を買う余裕のない貧しい人々が多く、コーヒー栽培は思うように進まないこと
ここに、新しい知恵を必要としていたのです。
この地域でのコーヒー栽培は、既に30年以上も実績があります。しかし、政府肝いりで始まったものの、タイのコーヒー市場はまだ成熟しておらず、品質面で海外競争力もなかったことから頓挫し、他の換金作物に戻ってしまったのです。農民の多くは過去の失敗からコーヒーの再開に懐疑的でした。また、興味を示す農民も、その多くは短期で収入にならないコーヒー苗を買う経済的な余裕がなかったのです。
▼
▼
スタートアップ支援のため、コーヒー苗を無償支給いたしました。
過去に栽培実績があったとはいえ、世代交代などで現在の農民にはほとんどコーヒー栽培の知識がありませんでした。従ってコーヒー栽培をイチから指導することが求められました。一方、支援するALL Netも、当時はコーヒーに詳しい人材は皆無でした。
▼
▼
①チェンマイ大学農学部より、さまざまな指導をいただきました。
②国内コーヒー専門家に依頼し、プロジェクトレビュー、現地調査その他、必要なコンサルティング体制を構築しました。
このプロジェクトは並大抵の努力では成功させることが難しいと判断されたため、常時現地で強力に指導できる体制づくりが急務でした。
▼
▼
タイ山岳少数民族支援で現地民から信頼の厚い「暁の家」の中野穂積様に協力を要請(チェンマイ総領事館からご紹介いただきました)し、プロジェクトの現地リーダーになっていただきました。
暁の家は、NPO法人ルンアルン(暁)プロジェクトがタイ北部に保有する施設で、自ら農場を持ち、さまざまな農作物を自作しています。CMPPへの参加をきっかけに、チェンマイ大学からの指導を受けて自らもコーヒー栽培に乗り出し、有機栽培にチャレンジし、ついには現地のモデル農場となって、CMPPを牽引する強力なエンジンに成長していきました。
換金作物であるコーヒー栽培は収率アップのため化学肥料の使用が一般的ですが、次のような深刻な弊害もあります。 ◆農民への健康被害 ◆コーヒー樹の疲弊 ◆農地の疲弊 ◆水資源の汚染
▼
▼
この課題解決には有機農法が有効ですが、タイでは不可能(経済的に成り立たない)と言われていました。しかし、有機農法を推進してきた暁の家で、コーヒーについても試行錯誤して軌道に乗せることに成功し、現地民を指導しました。
新規参入のため、安定的な事業継続にはコーヒー豆の新たな販路を開拓する必要がありました。
▼
▼
日本での販路開拓のため、国内での流通網整備に注力しました。変動の大きいコーヒー相場に左右されないように、フェアトレード方式を提案し、快く引き受けていただきました。
その後タイのコーヒー需要が急速に伸びたため、現在では全量がタイ国内で販売されています。
ALL Net はコーヒー事業のプロではありません。それが成功できたのは以下の要因の複合効果だと考えています。
◆農家にコーヒー栽培を受け入れる素地があったこと
◆タイのコーヒー需要が順調に伸びたこと
◆各方面の専門家(現地の大学、コーヒー専門家、タイで信頼の厚いNPO法人)と有機的な連携ができたこと
2006年7月
モン族を支援対象に事業開始。初年度分としてコーヒー苗200本贈呈、植え付け指導
2007年7月
モン族を対象に2年度分としてコーヒー苗500本贈呈、植え付け指導
2007年12月
外務省にODAとして チェンマイ近郊少数民族の生活向上プロジェクト(CMPP)を提案
2008年7月
モン族を対象に外務省の日本NGO連携 無償資金協力を得て、同上プロジェクトの贈呈契約を締結
2009年7月
モン族向けプロジェクト第2期贈呈契約を締結
2010年5月
地域と規模を拡大して苗木贈呈、植樹参加、現地指導、セミナーを実施。苗は、クンチャンキアン村向け21,000本、ターコー地区向けに9,900本(計30,900本)
2010年8月
プロジェクト第3期贈呈契約を締結
2010年10月
外務大臣表彰を受賞された「ルンアルン(暁)プロジェクト」代表の中野穂積さんの講演会を開催
2010年12月
コーヒー加工棟の完工式を在チェンマイ総領事出席のもとで実施
2011年11月
ターコー地区サンクラン村とローチョー村にコーヒー皮むき機を各1台を貸与
2011年12月
外務省にプロジェクト完了報告
2012年2月
農民が収穫したコーヒー豆137kgを購入し、日本国内有名コーヒー店ルートで販売を依頼
2012年3月
農民の要望で灌漑用水を畑に引き込むためのビニールパイプを寄贈
2012年5月
ターコー地区にコーヒ苗木3400本、有機肥料110袋を寄贈
2012年10月
在チェンマイ総領事館による事後調査
2013年5月
ターコー地区にコーヒー苗木3000本、有機肥料93袋を寄贈
2014年5月
同地区にコーヒー苗木2000本を寄贈
2015年2月
同地区に有機肥料54袋、木酢液34本を寄贈、ベリーボーラー(害虫)退治セミナー&実習を実施
2015年5月
同地区にコーヒー苗2000本を贈呈し、育成から販売を支援
2016年5月
同地区にコーヒー苗1200本を贈呈し、育成から販売を支援
2017年5月
同地区にコーヒー苗2000本を贈呈し、育成から販売を支援
2018年10月
提携NPOであるルンアルン(暁)プロジェクトを通して、水源の森育成資金を寄贈
◆三重県出身
◆NPO法人ルンアルン(暁)プロジェクト 代表
◆外務大臣表彰 受賞
◆CMPPプロジェクト現地代表
生活向上プロジェクトに参加する中で、多くのことを学ばせていただき、感謝しております。また、以前は生徒の保護者と寮管という関係だった山地民の人々と、コーヒー栽培と加工に取り組む中で、より人々の心に寄り添い、信頼し合う関係が出来てきました。互いに学び合い、協働していく関係に発展していったことは、とても嬉しいことでした。 (2018.7.20)
特定非営利活動法人 All Life Line Net (略称 ALL Net)
<事務所(移転中)>
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-7-2 東京堂錦町ビル5階
TEL/FAX :
E-mail: hq@allnet-japan.org
All Life Line Net - NGO (ALL Net)
<Office(under moving)>
Tokyodo Nishikicho Building 5F
3-7-2 Kanda Nishikicho, Chiyoda-ku, Tokyo, JAPAN 101-0054
Phone/Fax
E-mail hq@allnet-japan.org